歯科医院の増加傾向

歯科医院は現在全国で約6万9000件、過剰だと言われながらも増加傾向が続いています。新規開業歯科医院は以前より減少傾向ですがそれでも年間で1800〜2000件あるのです。一方、廃業歯科医院はというと1200〜1700件と年度によってかなりの開きがあります、景気の影響でしょうか。しかし、歯科医院数が純減の年度はこれまでに一度もありませんし、これからも当分の間はこの状態が続くでしょう。おおむね、毎年200〜300件の歯科医院数が純増という状況です。当然ながら日本の人口はこれから高齢化と同時に減少していきます。

歯科医師数の増加傾向と意味のない歯科医院コンビニ比較

歯科医師数も平成22年に10万人を突破し、さらに毎年2000人以上の歯学部卒業生が出てくることから増加傾向となっています。歯科大学の定員を1割削減や結婚・出産などで離職率の高い女性の歯科大学合格率を上げたり、国家試験の難易度を上げて合格率を下げたりと苦肉の策を打ち出してはいますが焼け石に水程度で、根本的な解決には至りません。結局は歯科医院の自然淘汰、はては私立歯科大学の自然淘汰を待つしかないという現状がささやかれております。

歯科医院はコンビニより多いと比較されることが目に付きますが、コンビニは全国で55000軒程度あります。コンビニ業界は毎年2000件以上の増加傾向です。以前はコンビニ比約2倍の歯科医院数と言われていましたが、大手チェーンごとの競争激化によりコンビニ数の増加は著しく、街中にもコンビニとコンビニが近くなったことは実感できるでしょう。またこれまで開業されてこなかった定住層の少ない海水浴場周辺やスキー場、観光地周辺にもコンビニがオープンするようになりました。それに伴い廃業するコンビニも増加していて、コンビニ跡地を居抜き開業する歯科医院や動物病院、ペットショップやデイサービスなど1階駐車場ありの好立地好利便性を生かして再利用する姿も目立って来ています。ちなみに全国津々浦々まである郵便局は2万4000件でほぼ横ばい、乱立した印象のラーメン店は3万1000件ですが毎年500〜1000件減少しています。歯科医院とコンビニや他業種では事業構造において全く違う業態ですので比較すること自体がなんら意味を成しませんし気にすることでもありません。しかし一般の方にとってはマスコミが取り上げたこの比較方法はインパクトがあり分かりやすいことも事実なのでしょう。ただし、これらは単なる全体論にしか過ぎず、歯科医師過剰というフレーズが独り歩きをしている印象も否めません。

医科と歯科での比較

では、医師・医科との比較はどうなのでしょう。医師数は約31万人、毎年約9000人の医学生が国家試験をクリアし医師として生まれてきます。歯科医師数に比べて医師数は約3倍、意外に思う方も多いと思います。多いでしょうか?少ないでしょうか?1つの総合病院に多くの医師が勤務していて、総合病院は都市圏であれば民間・国公立・大学病院など市区町村に複数あることも珍しくないです。対して歯科は1つの歯科医院に1人の歯科医師というところが圧倒的に多く、たとえば歯科大学病院を除き1歯科医院に10人以上の歯科医師が在籍しているケースは全国でも数えられる程度でしょう。また医科は内科・小児科・眼科・・・たくさんの科がありますが歯科は単科です。

診療所の数では医科の無床診療所が約10万件、歯科診療所は前述の通り6万9000件となります。しかし医科無床診療所は内科・小児科・産婦人科・眼科・皮膚科・耳鼻咽喉科・・・などが身の回りに多いと思います。歯科診療所はインプラント専門医院も出てきてはいますが単科であり、医科歯科を通して歯科診療所が最も多いことは事実でしょう。また、最近では医科でも医師過剰問題が取り上げられるようになってきました。もちろん慢性的に医師不足の産科・外科・救急など、あるいは都市圏に医師が集中し地方では不足するという偏在医師問題もございます。しかし都市圏では医科診療所も飽和状態になりつつあるというデータも見えるようになってきました。その影響か医科でも居抜き物件を見受けられるようになりました。

歯科の何が過剰なのか?

端的に全体論をもって過剰と言われる歯科医院。しかしコンビニより過剰や医師より過剰という問題ではありません。国民1000人当たり歯科医師数で比較すると日本は0.74です。トップのアメリカは1.53、2位がカナダで1.18、3位はオーストラリアで1.04・・・日本は歯科医師数で判断すると34先進諸国で構成されるOECD加盟国のなかで歯科情報を提供している21ヶ国中7位です。また国民1人当たりの歯科医療費では11位、対GDP比では9位となっていて他にも様々な指標で国際的には過剰でもないと言えそうです。しかし、ずば抜けた指標が一つあり、公的保険の診療単価なのです。国際比較ではすべての診療で最も単価が低く、そして他国との差が大きいことが特徴的です。歯科医師数が増加しつつも日本の保険診療報酬は横ばい推移で(歯科医師1人当たりは減収)、さらには医療費抑制方針の影響もあります。この日本独特の保険診療報酬で考えた場合には国民1000人当たり歯科医師数は0.5が適性値と言われています。日本人口が1億人ならば5万人ということになります。つまりは保険診療報酬に照らし合わせた場合は、2倍以上の過剰度であるということでしょう。しかし単純に歯科医師数で判断できるかというとそうでもなく、少し前に歯科医師の5人に1人が年収300万円以下やワーキングプアなどと言われたりもしています。歯科医師には定年や免許返上がありませんので、引退した歯科医師やのんびりと仕事をしている開業医、あるいは大学病院勤務の歯科医師、あるいは約4割を占める女性歯科医師の場合は結婚・出産で仕事をしていなかったり、出来る範囲で仕事をしたりというケースもあるでしょう。他の国家資格職業の年収正規分布を見ても実は似たり寄ったりです。また、開業医は事業主ですので当然開業医の正規分布を見ても年収の少ない人もそれなりに存在するはずです。これらマスコミの言葉を利用して歯科医師削減とは積極的に動きにくい国省庁を横目にネガティブキャンペーンが行なわれているということも感じられます。現役歯科医師の年齢分布の中で最も多い50代〜60代の方たちがこれから引退し超高齢化社会となる日本では、地方で歯科医師不足という現象も起こってきて歯科医師偏在化問題が出てくるのではないかと思います。

これらの比較から全体論としてまた保険診療報酬体系からみて歯科医師数・歯科医院数ともに過剰であるということは認識しておかなければいけないでしょう。歯科医師の方は既知の事実で理解されているとは思いますが、歯科医院を開業するという人生の一大事のまえに、ここでもう一度しっかりと確認して頂きたいと思います。しかし、歯科医師は6年制大学を卒業し難関な国家資格を取得した特別な人材ですし、歯科医師が必要とされる時代は永久です。大切なことはどんな歯科医師になるのか、どんな歯科医院を構築するのかということではないでしょうか。